ぬばたま
水に燃え立つ螢、螢 もの云わで、笑止の螢
DATE: 2009/06/18(木)   CATEGORY: 独語り録
【独白】狐さんのお婿入り
ひのやま城は今日も良い天気じゃ。城下の稲穂も青々として、秋の豊饒が期待できる。
……元春さまの側室になってから、何やら雑事を手伝おうとすると一応家臣が気遣うてくれるようになったので妾のやることが減った。ううむ、庭の掃き掃除と廊下の雑巾がけくらいするのになあ。(暇なら自分の部屋の引越し片付けをどうにかしろという女中の視線が痛い)

時間が出来たので元春さまの仔狐、よりはるどのと遊ぼうかと思い、とのさまの部屋へ(ついでに)茶菓子を運んでいく事にした。あ、よりはるどののぶんに油揚げも持ってゆかねばの!

元春さまのお部屋にて内侍は見た。元春さまが仔狐どのに、女子がおると言うのを…!よりはるどのいつのまにそんなふしだらな子になったのじゃ!(わあん)どうすればッ、こういうのは花火師に相談すればよいのか!(←狐の事だからか色事だからか理由があやしい)
城主のお部屋の襖を声も掛けずに開ける癖がある妾もまあ、悪いと思いまするが!とのさまもちょっと驚きすぎじゃ!この時勢の男子たるもの何時曲者が踏み込んでくるか分からぬというのに、そーいうこころがまえが…あー…とにかくそれは置いておくのじゃ。前からのことであるしの。

ひとのことは言えぬけど、『よりはるどのがお婿に行ったら』という話にうろたえるとのさまは面白かったのう!ほんとの御子ができたらどうなさるんじゃろう。そのへんは美々さまにお任せすれば大丈夫か…(←育児放棄する側室)

……あれ。妾、とのさまに重要な事を言いそびれた気が…




【日野山城/吉川元春さま】





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DATE: 2009/06/13(土)   CATEGORY: 独語り録
【独白】君に奉りて をち得てしかも
既にこの身は自由なのだと、怒りを買ってなどいなかったのだと知らされて
とおい国で残っていた知己たちも無事で、その役目から解放されてもいいのだと
…そう聞かされて妾は無責任に喜んだ。が。

其れで、やっぱり妾は考える事が自分のことばっかりじゃということか。
いまとなっては詮方ないと分かっていても、考えもしなかったことを思い始める――ああ、あとほんのすこしのあいだくらい、大人しく服部さまのそばにおればよかったのではないか。…

いったい妾は何に怯えて、何に駆り立てられていたのであろ。童のように帰る場所を恋しがって、いたずらに騒ぎ立て、たくさんの人々の手を煩わせ。…なんで思い至らなかったのじゃ、服部さまは口ではずいぶん怖い事を仰るが、妾には(…座敷牢の一件ぐらいしか)ひどいことなどされなかったし、吉川にもほんとうに手出しなされたことは無かったのに…。
妾は何をしようとして、いったい、何をした?


なぜ、わかっていても妾は『やさしくいたわる』とかいう言動が、こんなに苦手なのであろ。
怒っているか小言みたいな口振りになってしまう。ああ、まったく。

妾は吉川に帰りたかった、自由になりたかった。
したが、違うのじゃ。こんなことを望んでいたわけではなかったのに。

生きるも死ぬも思いに任せない。いつも、願うとおりになどことは進まない。
……服部さまは、妾が最初に思っていたように、矢張りおやさしい方、じゃった。


【望楼館/服部半蔵さま】




以下、女性週刊誌みたいになったのでたたんでみます。
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DATE: 2009/06/11(木)   CATEGORY: 独語り録
【独白】コトノハ
その夕時、愛馬のハヤヒと遠駆けにでた。――三河に行っている間は全然かまってやれなかったのは悪かったと思うが、暴れ馬ぶりに磨きがかかっておる…!小柄の馬じゃのに…!(振り落とされそう)見た目も真っ白で優雅な鬣なのにのう。いくさでまっしぐら先陣切るときしか気が合わぬのがもとからだけれども…突出で叱られるのがいつものことだけども…。

いつの間にやら蛍や星の目立つ時間になっておった野の上で、妾はめずらしく騎馬する殿御のすがたを見つけた――否、まえにも…ずいぶんまえにも、ここで何度か、偶然会うて。馬首をならべて誰かと話をしたことがある…。

ああ、やっぱり、真田幸村どのだった。

否、あの、いまは! いまはまだ…心の準備とかが!いや、後日改めて謝罪と御礼に行こうかと思うていたのに…のばしのばしにしているうちに、いきなりこんなふうには…
――…妾は、真田どのに今度のことで、否、会うてからずーっと、世話をかけつづけたあげく最近になって心ならずとはいえその恩義を裏切るような真似をした。いのちを脅かし、ひどいことをした、ひどいことを言った。けれども真田どのは妾に優しゅうあるままで、まえのように叱ってもくれる真田どののままで…。

まだ、いまになっても前のように気安く語り合えるなどと期待するのは甘えじゃとわかっていた。けれども、真田どのは、そうした。――…妾は逃げ出したくなるような心を抑えて、やっと、拙い言葉で謝る事ができた。吉川に戻れたことも伝えると、真田どのは、今の妾の笑顔で報われたと、…言うてくれた。
ああ、そうじゃった…のう、真田どのに謝るのに形式とか贈り物とかそういうことが問題ではなかったなあ。(うん、でも厳島で外つ国の赤い酒が届いてたからあとで送っておこうか)



【狩り場/真田幸村さま】

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DATE: 2009/03/04(水)   CATEGORY: 独語り録
【独白】春霞
そのうち還俗することになった、とここのところほったらかしにしたままだった厳島のあねさまたちに言うたら、――しかも理由が婚姻だと言うたら、えらい騒ぎになってしもうた。
厳島の内侍たち、つまり巫女は神の嫁じゃ。
人の嫁を兼ねることはできない。
必然的に、内侍はやめることになるけれども唄舞や通力の修練のことでまた出入りしても良いと棚守さまに、お祝いと共にお許しを頂く事が出来た。…なんだか今までとも変わりないことになりそうじゃ。
通力の不調のことも、はやくなんとかせねばのう。花火師の命数の事が気にかかる。…要は夜礼さまがふてくされているだけじゃと思うからどうにかしてご機嫌をとらねば…、元春さまが神の意を尊重してくださったのがうまくはたらきつつあるようだけれども…。

否、厳島の騒ぎと言うてもひのやま城に帰った次の日の比ではないけれども!
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DATE: 2009/02/25(水)   CATEGORY: 独語り録
【天下布武】しろがねの花
花は根に、鳥は旧巣にや帰らん、
惜しみし物を桜色に、染めしは花の袂を、
このいつしか変わるは、いわぬにきたる夏衣、
卯の花咲ける玉河の、堰に懸かる白浪、
ニ葉に見えし葵草、御生の比や栄えん




伊賀同心の服部さまのおんもとを逃げ出して、年が明けて、まだ妾はやざえもんが手配してくれた妓楼山吹に居候していた――全く、何も手をつけかねているうちに、目まぐるしく時ばかりがめぐる。

花火師ら仟渡の兄弟や忍衆の目もあるからかもしれぬが…同心からの追っ手も襲撃もまるでない、これがよいと言えばよいのだけれども、妾は吉川に帰る足をむける決意がつかないでいる…。
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